2025-26のアスレティック・ビルバオは、久しぶりのチャンピオンズリーグに挑みながらリーグ12位に沈みました。バルベルデが去り、指揮棒はドルトムントを率いた男に渡ります。それでもロッカールームには、この夏W杯を勝ち切った3人がいる。落ちるだけの材料と、跳ね返すための材料が同居した状態で、新しいシーズンが始まります。
前季の数字:CL挑戦の裏でリーグが崩れた
2025-26のビルバオはリーグ12位、コパ・デル・レイ準決勝、スーペルコパ準決勝、チャンピオンズリーグはリーグフェーズ止まりという成績でした。得点源はゴルカ・グルセタで、リーグ10得点・公式戦17得点です。
最終節はベルナベウでのレアル・マドリード戦。4-2で敗れ、勝点42の12位でシーズンを終えました。前季(2024-25)が4位・勝点70だったので、1年で勝点を28も減らした計算です。11-12年ぶりのCL本戦という祭りの裏で、リーグ戦の週末に力が残っていなかった。数字はその消耗をそのまま映しています。
バルベルデの10年が終わった
バルベルデは3月20日、クラブ公式チャンネルの動画で「来季は指揮を執らない」と自ら発表しました。通算3度の政権(2003-05、2013-17、2022-26)でクラブ史上最多の指揮試合数を積み上げ、2015-16のスーペルコパと2023-24のコパ・デル・レイという2つのタイトルを残しています。特にコパ制覇は40年ぶりで、優勝パレード船「ガバーラ」がネルビオン川に浮かびました。
ビルバオにおけるバルベルデは、単なる監督ではなく「クラブのやり方」そのものでした。バスク人選手だけで戦うという制約の中で、育成上がりの選手を我慢強く使い、CL出場権まで届かせた。その人がいなくなる影響は、戦術うんぬんより先に、選手の扱い方や我慢の基準といった見えない部分に出ると私は考えています。
テルジッチという選択
後任探しでクラブが最有力と定めたのはエディン・テルジッチでした。2024年のCL決勝でレアル・マドリードに敗れてドルトムントを離れて以来、無所属だった人物で、ウリアルテ会長の一押しだったと伝えられています。クラブOBのイラオラも今夏フリーになりましたが、今回は復帰のタイミングではないと整理されました。5月5日にクラブが正式に就任合意を発表しています。
ドルトムント時代のテルジッチは、縦に速い攻撃と強度の高いプレッシングでブンデスリーガ優勝まであと一歩に迫りました。育成組織の若手を躊躇なく使う監督でもあります。カンテラ「レサマ」の選手で回すしかないビルバオとの相性は、経歴だけ並べれば悪くありません。
W杯がもたらしたもの
この夏の北中米W杯はスペインが制しました。決勝はアルゼンチンに1-0。決勝点となったフェラン・トーレスのゴールをアシストしたのがニコ・ウィリアムズでした。ウナイ・シモン、アイメリク・ラポルト、ニコの3人が世界王者としてビルバオに戻ってきます。テルジッチ本人も「3人の世界王者がいることはクラブの誇り」と述べ、大会中から3人と連絡を取っていたことを明かしました。
12位のチームに世界王者が3人。この不釣り合いこそが今季の出発点です。疲労と離脱のリスクは抱えますが、シーズンを通じて計算できる軸が守備の中央(シモン、ラポルテ)と攻撃の左(ニコ)に立っているのは大きい。
巻き返しの条件は3つ
1. 得点力の底上げ
チーム最多がリーグ10得点という数字が、この1年の攻撃をすべて説明しています。ストライカー不足はバルベルデ時代からの宿題で、補強で解決できないクラブである以上、答えはニコの完全復調とサンセトの得点関与を増やす設計しかありません。
2. 中盤の作り直し
今夏はベスガ、ウナイ・ゴメスら中盤の選手がまとまって退団しました(詳細は「移籍市場」)。ハウレギサールを軸に誰を並べるかは、テルジッチ体制の最初の見せ場です。
3. 週1回の戦いに集中できる
今季は欧州カップ戦がありません。25-26の失速がCLとの二足のわらじによる消耗だったなら、週末に全力を注げる今季は回復の条件がそろっています。過去にもビルバオは、欧州出場のない年に順位を上げてきました。
私の予想
開幕前の時点で、私はリーグ6〜8位、欧州カップ圏への復帰争いと予想します。監督交代1年目に優勝争いを求めるのは現実的ではありませんが、42という勝点は選手層に対して低すぎる数字でした。日程の余裕と世界王者3人の存在を考えれば、勝点55〜60まで戻す力は十分にあります。まだ確定していない要素(ラポルテの去就、ニコのコンディション)は移籍市場の閉幕とともにはっきりするので、開幕後にあらためて追記します。